2021/06/30
クォ・ヴァディス
この題名からすぐ内容が分かる人は余程の映画か文学の通、もしくはキリスト教に造詣の深い人でしかない。何が何だかわからない私、『クォ・ヴァディス』(原題:Quo Vadis、1951年、アメリカ)をBS録画視聴。映画原作は、ポーランドのノーベル文学賞受賞作家ヘンリク・シェンキェヴィチによる歴史小説。「クォ・ヴァディス」とはラテン語で「(あなたは)どこに行くのか?」を意味し、新約聖書『ヨハネによる福音書』からの引用らしい。物語は西暦1世紀、暴君と言われるネロの治世下のローマ帝国を舞台として、元王女で人質の若いキリスト教徒リギア(デボラ・カー)と、軍人マルクス・ウィニキウス(ロバート・テイラー)の間の恋愛、当時の上流階級に見られた堕落し享楽にふけった生活や社会、キリスト教徒への残虐な迫害の様子を描いている。

「十戒(1956)」、「ベン・ハー(1959)」などの「キリスト教の歴史、教えます」的映画より知名度が低いが、大作時代のエキストラをふんだんに使ったハリウッド史劇。媚びる佞臣ばかりに囲まれた暴君ネロ、そして彼の常軌を逸した行動言動の数々、そこに輪をかけた悪妻の邪さが、この当時ローマ帝国では異教だったキリスト教徒を徹底的に苦しめる。ローマの大火、弾圧のための見せしめショー(ライオンを放つ、牛との対決)など、SFXなき時代にどうやって撮ったのか気になる映像がふんだんに見られる。
宗教的教養、特にキリスト教に関する知識がないと欧米社会は理解不能になるのではないかなどと、あらためて宗教に中庸的感性で書かれた塩野七生の「ローマ人の物語」でもじっくり読もうかと思わせる作品でした。
#クォ・ヴァディス